MID-NET®ではどんな研究ができる?編集部による研究調査結果

はじめに

国の事業で構築されたMID-NET®(Medical Information Database Network)は医薬品安全対策のさらなる質向上を目的として、平成30年4月に本格運用を開始しました。

このMID-NET®は、電子カルテ/レセプト/DPCデータを集積しており、2020年12月時点では530万人超のデータが利用可能となっています。特に、他の商用データベースでは紐付けられていないことの多い検体検査の結果値データも解析可能であることが特徴です。1)

今回は、MID-NET®を使用した研究の疾患領域と研究テーマを調査し、その内訳をまとめました。
本記事が、MID-NET®研究を検討している方にとって、疾患領域や研究テーマの先行研究調査をするときの参考になればと思っています。

調査方法

調査対象

独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下、PMDA)が公開している承認された利活用に関する情報に掲載されている調査・研究20本(2021.07.27現在)

  • 利活用契約者の所属機関がPMDAのもの:14本
  • 利活用契約者の所属機関がPMDA以外のもの:6本
    ※ 論文化されているか否かは問わずに調査をしています。

調査方法

アブストラクトを確認し、疾患領域と研究テーマの分類をしました。


疾患領域:ICD-10を参考にし、以下の疾患領域に分類しました。

  • 感染症
  • がん
  • 血液疾患
  • 内分泌・代謝疾患
  • 精神疾患
  • 神経疾患
  • 眼疾患
  • 耳疾患
  • 循環器疾患
  • 呼吸器疾患
  • 消化器疾患
  • 皮膚疾患
  • 筋骨格系疾患
  • 泌尿器疾患
  • 周産期
  • その他

研究テーマ

  • 医療資源分析・コスト
  • 有効性調査
  • 有害事象・副作用・合併症調査
  • 患者実態調査
  • 治療実態
  • 費用対効果
  • 服薬アドヒアランス・治療継続率
  • バリデーション
  • 臨床予測
  • リスク因子調査
  • その他

疾患領域ごとの内訳

疾患領域に大きな偏りはありませんでしたが、循環器疾患内分泌・代謝疾患感染症の調査・研究が多いことがわかりました。
上位3つの疾患領域で対象となった薬効分類は以下の通りです。

  • 循環器疾患:降圧薬、抗凝固薬、肺高血圧治療薬
  • 内分泌・代謝疾患:高コレステロール血症治療薬、糖尿病治療薬、抗甲状腺薬
  • 感染症:肝炎治療薬、COVID-19治療薬

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研究テーマごとの内訳

研究テーマは、「有害事象・副作用・合併症調査」が最も多く見られました。
これは、MID-NET®が医薬品安全対策の質向上を目的としている2)ことからも明らかな結果だと思います。
一方で、下記のような調査・研究も行われており、個別医薬品の安全性調査のみならず、MID-NET®の今後の利活用に目を向けた取り組みもあることがわかりました。

  • バイオ後続品の安全性評価へのMID-NET利用可能性の検討 
  • MID-NETに基づくCOVID-19治療薬のリスク・ベネフィット評価を適切に実施するための課題整理に関する研究

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疾患領域と研究テーマを合わせた内訳

検査値データの解析をできることがMID-NETの大きな特徴です。
「有害事象・副作用・合併症調査」の中では、

  • 選択的ミネラルコルチコイド受容体ブロッカーによる低カリウム血症の発現状況
  • 抗うつ薬による血小板減少指標への影響評価
  • 乾癬治療薬による好中球数減少のリスク評価

といったように、どの疾患領域においても検査値を指標とした研究・調査が多く行われていました。

「治療実態」では、

  • チアマゾール処方患者の血液検査実態調査
  • C型慢性肝炎治療薬処方前のB型肝炎ウイルス感染に関する検査実施状

といったように、安全に医薬品を使用するための検査が実臨床で行われているのかどうかを調査していることが特徴的でした。

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最後に

今回、公表されているMID-NET®の利活用情報を調査したことで、リアルワールドでの安全性を評価した研究が多くされていることがわかりました。
それだけでなく、利活用に目を向けた取り組みも進められており、このような基盤となる研究がさらに進むことに期待をしています。

MID-NET®は平成30年4月に本格運用を開始したので、まだ日が浅いです。また、利活用には有識者会議の意見を聴いた上での審査が行われるなど3)、利活用のハードルが高いとも思われます。したがって、公表されている調査・研究は他の商用データベースと比べて少なくなっています。

MID-NET®は他の商用データベースにはない特徴を備えているので、今後どのような利活用がされるのか注目ですね。

関連記事

他の商用データベースとしてよく使われているMDV DatabaseやJMDC Databaseの調査結果と比較することで、各DBの特徴・活用方法への理解が深まります。

引用

  1. 「MID-NET® リーフレット 2021.2第2版」、独立行政法人医薬品医療機器総合機構 https://www.pmda.go.jp/files/000233711.pdf
  2. 「MID-NET®の目的と意義」、独立行政法人医薬品医療機器総合機構https://www.pmda.go.jp/safety/mid-net/0001.html#1-1
  3. 「MID-NET®の利活用の概略」、独立行政法人医薬品医療機器総合機構https://www.pmda.go.jp/safety/mid-net/0001.html#1-2
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